2015年、パリ協定が採択されました。これは2020年以降の気候変動問題に関する国際的な条約です。世界全体の平均気温の上昇を、産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ちながら、1.5度上昇に抑えるために、各国が協力し世界の温室効果ガス排出量を抑えていくことをめざしています。
現在、再生可能エネルギーの導入をはじめとした対応策が検討されていますが、こうしたゴールの達成はそう簡単ではありません。

ですが次世代、50年後も100年後を生きる子どもたちのWell-being(幸福で健康な生活)を考えると、今、すぐにでも私たちが行動を起こす必要があります。

 

気候危機の問題は影響が出るまでの時間が長期にわたるので、すぐに効果が出ないぶん、問題の深刻度が現在を生きる我々に伝わりにくい側面があります。とは言え今やらないと後世の人々が本当に苦しい想いをしてしまう。現代を生きる私たちは、考え行動する必要があるでしょう。

地球は今、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化によって、深刻な気候危機に直面しています。これは太陽からのエネルギーによって、地上から放出される熱を、温室効果ガスが吸収または再放射することで、地上の温度が上昇するというメカニズムが根本にあります。そのため、CO2などの温室効果ガスの濃度が上がってしまうと、それに伴って地上の温度も上昇してしまうのです。

1760年代に始まった産業革命以降、化石燃料の使用は年々増加し、現在までに世界の平均気温は0.85℃上昇しています。さらに2100年には、4度前後、気温が上昇するという試算も存在します。また、1900年以降は氷河などの融解によって海面が19cm上昇したともいわれています。 [1,2]

海面上昇の主な原因は、海水の温度上昇による氷河の融解や、水温が高くなって海水自体の体積が膨張することによって起こります。このままでは2100年に200㎝前後上昇するという研究結果も存在し、仮にそれが現実になると、島国などで暮らす人々は住む場所を失い多くの環境難民が生まれてしまいます。また、氷河で暮らすホッキョクグマについては、2050年までに生息数が3分の1に減少、2100年までに絶滅の恐れまで叫ばれています。 [3,4]

また気候危機によって、多くの地域で風水害のリスクも増加します。近年多発している「スーパー台風」の到来だけでなく、集中豪雨の発生回数、降雨時間、降雨量のすべてが増加するとも予測されています。

またそれに伴い洪水の発生頻度も、海水温度が約1度上がると約2倍、約3度上がると約4倍になるというシミュレーションが存在します。さらに、雨による被害だけでなく、2021年1月、日本の北陸地方では「ゲリラ豪雪」と報道された深刻な大雪のように、今後は集中的な降雪の被害も一部の地域では増えていくかもしれません。 [5]

もちろん温室効果ガスの多くは、多様な産業活動からの排出が主な要因です。しかし、これらの気候危機は国家や企業だけの責任ではありません。実は私たちの日常生活にも関係しているのです。

たとえば私たちが生きていくうえで重要な「食」。つまりあなたの日頃の食生活も、気候危機の要因となる、温室効果ガスの排出に関係しています。

魚、ステーキ、果物、これらの食事を生み出す過程では、それぞれCO2をはじめとした温室効果ガスを発生しています。たとえばステーキ1枚。これは樹齢80年ほどの杉の大木1本分が、なんと1年間に吸収するCO2相当量を排出しているのです。[7]

その内訳は、農地整備のための土地改良や、牛のげっぷや農機具使用など牛の飼育過程で発生する温室効果ガスが高い割合を占めています。また、牛肉はその他のたんぱく源である、豚や鶏、魚と比較しても非常に多くの温室効果ガスを間接的に発生しています。とはいえ、みなさんの食生活を急に変更することは簡単ではないでしょう。[8]

また、みなさんが口にするアイスクリームやケーキなどのお菓子に使用されているパーム油。実はパーム油を生産するための農地開発の過程でも、多くのCO2が発生しています。パーム油は主に東南アジアなど、熱帯地域のアブラヤシ農園で生産されていますが、農園化するために、泥炭地は木々を切られ水が抜かれます。その後、泥炭地が乾くことで、地中にいる微生物の分解や自然火災が発生し、多くのCO2が排出されています。[9]

パーム油はチョコレートをなめらかな食感にし、またスナック類をサクッと仕上げるなど、とても有効な油です。私たちもその恩恵を受けているし、パーム油で生計を立てている現地の生産者たちから、仕事を取り上げる権利は誰にもありません。そもそも日本を含め多くの先進国が、経済を優先して自国の泥炭地開発を進めて来た歴史があります。やみくもにCO2削減を叫ぶのではなく、その地域・土地の生活をどう守り、どう活用していくのを話し合っていくべきではないでしょうか。

こうした問題を解決するのはやはり簡単ではなさそうです。では今、あなた個人にできることは何かあるのでしょうか?

それでは、気候危機を緩和するために、あなた個人で明日からでも実践できる、食生活に関わる未来の選択肢をいくつか見てみましょう。

食に関わる温室効果ガスを減らすためにはフードロスや、食べ物を包装するペットボトルやプラ容器の使用料削減も重要です。

 

現在、日本のひとりあたりの一年間のペットボトルの消費量は約180本、レジ袋は有料化されて減ったとも言われていますが、以前は約450枚あったと言われています。そしてフードロスは約48kg。これは毎日大きめのおにぎり一個を捨てていることとほぼ同じです。 [10-12]

でも、もしもみんながマイボトルを使うようになったら、コンビニで牛乳を手前から順番に取っていったら、エコバッグを使うようになったらどうなるでしょう? これらの選択肢は、インパクトは小さくても、確実に温室効果ガスの削減につながります。

また今までにない、未来の「食」の形を模索する試みもあります。総合地球環境学研究所が推進しているFEASTプロジェクトでは2050年における4種類の未来の給食を試作しました。 そのひとつのは「地産地消」をテーマにしており、1.5度の気温上昇に抑えるために、「地元で生産されたものを地元で消費する」ことに焦点を当てています。
また、最近注目されている貴重なタンパク源である昆虫食も給食の中に盛り込まれています。信州では蜂の子、イナゴなどが伝統的に食されてきた文化もあり、これも低炭素な食物と言えます。 他にも、植物由来の代替肉など新技術を活用した環境にやさしい選択肢も普及するでしょう。

では最後に未来の外食の選択肢を見ていきましょう。先ほど多くのCO2を排出することがわかった牛肉のステーキですが、脱炭素社会を考えるならば、当然そのお値段は高くなるでしょう。なぜなら今後炭素の削減が期待できない場合は、「炭素税」といった経済原理を受け入れる必要性が出てくる可能性があるからです。これはたとえば2050年のファミリーレストランのメニューだったとします。あなは何を注文しますか?

さて、これまで提示してきた未来の選択肢はいかがだったでしょうか。進みゆく気候危機に対してあなた個人は何が出来るのか? それを考えるきっかけになってもらえれば幸いです。
個人の力はとても小さいものですが、明日からでもひとりひとりができることはあるはずです。まずはこの課題を自分ごととして主体的に捉え、次世代のウェルビーイングのために貢献してみようではありませんか。みなさんならそれができることを、私は知っています。えっ、なんでわかるのかって?

 

あっ!もう帰らないといけない!ありがとう。ひいひいおじいちゃん、ひいひいおばあちゃん!もう僕のことが誰かわかったよね!?

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