■目的
日立京大ラボが提唱する協同システム・アーキテクチャ「社会Co-OS」を構成する4つの基本機能 「集団合意形成」「集団意思診断」「個人行動診断」「個人行動介入」を接続したシステムを紹介します。地域社会における地産地消エネルギーを例題とする2つのシナリオを用いて、 開発システムの協調動作デモを紹介します。
■システム構成
社会Co-OSは「集団合意形成」「集団意思診断」「個人行動診断」「個人行動介入」の4つの基本機能で構成されており、それらの機能によって政治・合議を担うスローループと行政・運用を担うファストループを実現しています(図1)。
スローループでは「集団合意形成」において、シミュレーションに基づく複数の選択肢から目標となる合意案を決定し、 「集団意思診断」において、合意案に対するその後の施策実施状況をモンタリングします。「集団意思診断」の結果に基づいて継続的に「集団合意形成」での合意形成を行うことで、長期的な目標達成や継続的な目標維持を目指します。また、ファストループでは「個人行動診断」において、スローループで決定した合意目標に沿った協力行動介入策を分析し、「個人行動介入」において、各個人に対して具体的な介入を行い協力行動を促します。
■協調動作デモの説明
●シナリオ
協調動作デモでは、地域社会における地産地消エネルギーを例題として、スローループにおいて社会価値、環境価値、経済価値のバランス均等と3価値合算値の増加を目指して、年単位で目標設定(合意形成)と実施状況のモニタリングを行います。また、ファストループにおいて目標設定に沿った節電協力のための介入策分析と個人介入を行います。デモシナリオは次の2ケースです。
シナリオ1:毎年順調に目標達成しながら3価値のバランス均等と合算値増加を実現するケース
シナリオ2:毎年目標達成と未達成を繰り返しながら3価値のバランス均等と合算値増加を実現するケース
①集団合意形成
「集団合意形成」では、年単位での地域目標が設定され、その目標と結果の推移が可視化されます(図2)。
図2(a):シミュレーションに基づく複数の施策選択肢を三角グラフ上にプロットし、各選択肢における社会価値、環境価値、経済価値 のバランスを提示します。そして、年単位での目標と結果の推移が強調表示されます。ここで、社会価値は域内分配率、 環境価値は域内エネルギー利用率、経済価値は50世帯当たりの住民コストで定義しています。三角グラフの読み方については “Three-value assessment tool”を参照ください。
図2(b):3つの価値の合算値、域内分配率、50世帯当たりの住民コストの目標と結果の推移を提示します。
図2(c):最新年の目標となる社会価値、環境価値、住民コスト、域内分配率、節電協力率の値を提示します。
②集団意思診断(地域診断)
「集団合意形成」では、「集団合意形成」で決定した最新年の目標に対する1年間のモニタリング結果を提示します(図3)。
図3(a):水力発電による1年間の発電量を時系列に提示します。
図3(b):太陽光発電による1年間の発電量を時系列に提示します。
図3(c):水力発電と太陽光発電の設備情報を提示します。
図3(d):水力発電と太陽光発電の地理情報を提示します。
”Base map and data from OpenStreetMap and OpenStreetMap Foundation”
③個人行動診断
「個人行動診断」では、「集団合意形成」で決定した最新年の目標に沿って、個人特性に基づいた節電協力のための介入策の分析結果を提示します(図4)。
図4(a):対象とする社会的ジレンマの特徴量を提示します。
図4(b):特徴量に対する個人感度を提示します。
図4(c):対象とする社会的ジレンマに関する6つの心理的規定因のスコアを提示します。
図4(d):節電要請介入策の効果を提示します。
図4(e):節電要請介入策のランキングを提示します。
④個人行動介入
「個人行動介入」では、「個人行動診断」の分析結果に基づいて個人への具体的な節電要請介入を行います(図5)。
デモでは介入方法の一例として、個人の電力消費電力などを表示する画面に、節電要請のメッセージを提示する介入策を実施しています。